私たち人間が日々色々なことにストレスを感じるのと同様に、ワンちゃんも様々なストレスを感じます。しかしワンちゃんは言葉で訴えることができないため、飼い主さんがワンちゃんのストレスを察知してあげるしかありません。今回はワンちゃんがどのような時にストレスを感じるのか、ストレスを感じた時にどのようなサインを出すのか、さらにストレスが他にどのような悪影響を及ぼすのかをお伝えします。
ワンちゃんのストレスの原因は?
まずはワンちゃんがストレスを感じる状況や環境などについて見ていきましょう。
気温、明るさ、匂いや騒音
例えば、暑さや寒さなどの気温、明るさや匂い、騒音など、人間にとっては心地良くても、ワンちゃんにとってはストレスに感じることがあります。
具体的には、ワンちゃんは暗がりの方が良く見えるため、明るすぎる照明は苦手です。
また、嗅覚が優れているため匂いにも敏感であり、例えば芳香剤の匂いにストレスを感じることがあります。
他には、人間にとっては心地よい音楽でも、ワンちゃんからすると騒音としてストレスに感じる子もいます。
空腹や運動不足、のどの渇き
ワンちゃんは、空腹やのどの渇き、また運動不足でもストレスを感じます。特に運動不足はワンちゃんにとって大きなストレスになりやすいので、できるだけ散歩は行ってあげましょう。ワンちゃんにとって散歩は、最高の楽しみであることも多いのです。
お留守番
お留守番は大好きな飼い主さんと離れる不安からストレスを感じる要因の一つです。
仕事や思わぬ残業などやむを得ない理由でお留守番をさせなければならないことも多いと思いますが、ワンちゃんが不安を抱えていることをしっかりと理解し、時間の取れる休日などは沢山スキンシップをとってあげましょう。
家族の不仲
ワンちゃんの祖先は群れで暮らしていたこともあり、家族が喧嘩したり、不仲であることを察知し、ストレスに感じてしまうこともあります。
ワンちゃんにはできる限り喧嘩の場面を見せないようにしましょう。
環境の変化
環境の変化は人間にとっても大きなストレスになりますが、ワンちゃんにとっても同様にストレスとなります。
例えば、引越しなどによって周辺環境が変わってしまったり、飼い主さんが結婚したり、出産したりすることによる家族構成の変化には、ワンちゃんがストレスを感じやすいです。ワンちゃんが少しでも早く慣れ、落ち着けるよう見守ってあげましょう。
肉体的な苦痛
ワンちゃんが病気やケガをしているのに放置されてしまったり、体罰を与えられるとワンちゃんにとって大きなストレスになります。日頃からワンちゃんにケガがないかなど身体をチェックしたり、定期的に獣医さんの元で健康管理をしましょう。
精神的な苦痛
ワンちゃんが苦手なものなどに対して恐怖や不安を感じることもストレスになります。愛犬が恐怖や不安に感じることを飼い主さんが早めに察知し、先に回避する工夫をしたり、不安の原因となるものに徐々に慣れさせることが大切です。
ワンちゃんらしい行動ができない
獲物を追いかけて捕まえたり、匂いを嗅いで探索したりなどのワンちゃんらしい行動を極端に制限されることにストレスを感じます。飼い主さんが遊んであげたり、散歩に行ってあげることで、それらを満たしてあげることが必要です。
ワンちゃんのストレスサインは?
ワンちゃんの様子がいつもと違うと感じたときは、大好きなおやつを食べるかどうかでストレスレベルをチェックしてみましょう。強いストレスを感じていると、目の前に大好きなおやつがあっても食べられなくなります。
ワンちゃんは言葉で想いを伝えられないため、ストレスを感じると仕草や行動で表現します。
ストレスのレベル別のストレスサインを知っておきましょう。
カーミングシグナル(ストレスレベル:低)
「カーミングシグナル」とは動物のボディランゲージのことです。
ワンちゃんはストレスや不安を感じた時、自分を落ち着かせようとする時などに「カーミングシグナル」を出します。
不安、恐怖心や不快な刺激などを和らげる時にも使い、他のワンちゃんや人間と友好的に接するための手段でもあります。
あくびをする、目を細める
人間があくびをするのは眠いときや退屈なときなどですが、ワンちゃんは高ぶった気持ちを抑えたり、相手に対して敵意がないことを示したりするとき、ストレスや不快感を感じている時にもあくびをします。
十分に睡眠をとっているのに頻繁にあくびするようなら、それはストレスの表れかもしれません。
ワンちゃんにとってのあくびは人間でいう深呼吸やため息をつく行動に近いでしょう。
自分のしっぽを追いかける
ワンちゃんは、不安、恐怖、心細さやストレスを和らげるために自分のしっぽを追いかけてグルグル回ることがあります。子犬の場合はただ遊んでいるだけのことが多いですが、成犬がこの行動をする場合、ストレスを感じている可能性が高いので注意が必要です。
目をそらす
ワンちゃんはストレスを感じた時、その人や物を見ないように目をそらします。
例えば、飼い主さんに叱られると目をそらす子はよく居ますが、それは後ろめたいからではなく、単純に怒っている相手のことが怖くてストレスを感じて目をそらしていることが多いです。
後ろ足で体をかいたり、全身をブルブルッとふったりする
体を後ろ足でかいているが、そんなに痒そうでもない場合や、濡れた訳でもないのに、体をブルブルッとふる場合、緊張してストレスサインを出している可能性があります。あまりに何度もかく場合や同じ場所ばかりかいている場合は、皮膚のトラブルかも知れないので、獣医さんに診てもらいましょう。
足の裏が湿っぽくなる
人も緊張すると、手汗をかいて湿っぽくなることがありますが、ワンちゃんも人間同様に肉球に汗をかき、緊張すると汗が増えます。中にはフローリングに濡れた跡がつくほど、緊張して足の裏に汗をかく子もいます。
舌をペロペロして鼻を舐めたり、口をクチャクチャする
緊張した時や驚いた時などにワンちゃんの口元を見てみると、鼻を舐めたり、口をクチャクチャさせていることがあると思います。こちらもよく見かけるストレスサインです。
マウンティングをする
緊張したり、興奮した時やストレスを感じた時に、その発散や反動としてマウンティングを行う場合があります。マウンティングは、しているワンちゃんも、されているワンちゃんや人にとっても良い状態ではないので、すぐにワンちゃんを引き離し、落ち着く場所に移動して、興奮を静めましょう。
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ハァハァする
運動後でもないのに、暑くもないのに、ハァハァしている姿を見たことがある方もいるかもしれません。口が閉まらずに開いたままハァハァしている時は、緊張状態である可能性が高いです。ストレスを遠ざけ、落ち着かせ、ハァハァがおさまるようにしてあげましょう。
目の端に白目が出る
通常ワンちゃんの目は、黒目しか見えない状態です。しかし、緊張して顔の筋肉が硬直すると、目しか動かせなくなり、黒目の端に白目が見えやすくなります。
耳を後ろに倒す、上半身が後ろに引けている
ストレス状況下にあるワンちゃんは、耳を後ろに倒したり、下半身が引けて体勢が低くなったりします。唸っているワンちゃんも、この体勢になっている子は多くいます。そういうワンちゃんは、唸っていますが実際には恐がっている状態です。怖がっている対象が人やワンちゃんの場合、それ以上近づかないように、離れて距離を取りましょう。この場合は安心される目的であっても撫でるのはやめましょう。
同じ場所をウロウロする
ワンちゃんが落ち着きなく同じ場所を何度も行ったり来たりする場合、これもストレスサインの可能性があります。
無駄吠えの場合と同様、無理にやめさせようとするとかえってストレスを大きくしてしまうことがある為、ストレスの原因を探り、解消してあげましょう。
攻撃、威嚇などの問題行動(ストレスレベル:中)
威嚇や攻撃的な行動をすることで、トラブルになる覚悟でストレスの原因を遠ざけようとしている状態です。この場合、他の人やワンちゃんにケガをさせる可能性もあるので、なるべく早くストレスを取り除く必要があります。
体を震わせる
寒くないのにぶるぶると体を震わせる場合は、恐怖心を感じてたり、心細さ、不安感による震えの可能性があります。
特に体を縮めて震える場合には、相手に対して激しく恐怖心を抱いているサインです。やさしく声をかけ安心させてあげましょう。
無駄吠え
ワンちゃんが吠えるのは当たり前のことですが、目的もなく吠え続ける「無駄吠え」という行動をとる場合は、不安や恐怖、欲求不満、興奮などのストレスが原因のことが多いです。
この場合、無駄吠えがうるさいからと叱ってしまうと、ワンちゃんにとってはますますストレスが大きくなってしまう為、ストレスによる行動であるということを理解し、安心感を与えるよう心がけましょう。
体調不良・病気(ストレスレベル:高)
ワンちゃんがストレスを自分でコントロールできず、体に不調があらわれてしまっている状態です。この場合、健康を大きく損なう恐れがあるので、すぐに獣医さんに相談しましょう。
下痢・嘔吐
ワンちゃんのストレスが大きくなると下痢したり、嘔吐したりしてしまうことがあります。
特に、腸は”第二の脳”と言われるほど神経細胞がたくさんある臓器で、その神経細胞は脳と関連しているため、脳がストレスを感じると直接その刺激を感じ取ってしまうと言われています。
ストレスによる下痢や嘔吐の場合はその原因がなくなると自然に治まります。ただし、慢性化すると悪化するケースもあるため注意が必要です。
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執拗に手足を舐めたり、尻尾を噛んだりする
特に何もないのに前足や後ろ足を執拗に舐めている場合、ストレスで舐め続けてしまい、毛先の色が変わったり、皮膚を傷めてしまうことがあります。また、ぐるぐる回りながら尻尾を追い、噛んで毛をむしってしまうこともあります。自傷行為の場合は、単発的なストレスだけでなく、日常的に何かしら継続的にストレスがかかっている可能性があるため、改善が必要です。
知らないうちにストレスを与えてしまっている行為とは?
ワンちゃんのストレスの原因の中には、無意識に飼い主さんが与えてしまっているなものもあります。以下に当てはまることがあれば、すぐにやめるようにしましょう。
叱られるストレス
ワンちゃんが問題行動を起こしてしまった時に言葉で強く叱ことも多いと思います。しかし、ワンちゃんには飼い主さんの“怒った雰囲気”しか伝わらないと言われています。例えば、粗相をしてしまった時はすぐ片付け、逆に上手にトイレに排泄できたらほめてあげましょう。しつけは、よい行動を褒めることがポイントです。
甘やかされ過ぎる事によるストレス
普段きちんとしつけをせずにワンちゃんを甘やかしてばかりいることも、ストレスの原因に繋がってしまうことがあります。例えば、留守番が苦手なワンちゃんに対し、飼い主さんが四六時中一緒に過ごしてしまうと、災害時などでやむを得ず一緒にいられないときに、過度な不安になってしまい、大きなストレスを与えることになります。
独りになれないストレス
愛しいワンちゃんだからといって、ずっと誰かしらがかまってしまうことも、ワンちゃんにとっては実は苦痛に感じてしまうこともあります。コミュニケーションはもちろん大切ですが、ワンちゃんが独りでリラックスできる場所や時間を確保してあげることも大切です。
飼い主さんからワンちゃんに移ってしまうストレス
ワンちゃんは飼い主さんの行動をよく見ているため、飼い主さん自身が不安を感じていたり、家族内で争いが起こったりすると、ワンちゃんも影響されてストレス状態に陥ることがあります。飼い主さんのストレスは、ワンちゃんにとってもストレスになってしまうので、ワンちゃんの前ではなるべく不安な姿を見せないようにしましょう。
無理強いされるストレス
例えば、散歩の途中で歩くのをやめてしまったワンちゃんをリードで無理やり引っ張って歩かせようとすることはワンちゃんにとって肉体的にも精神的にも苦痛になります。ワンちゃんが自分から歩きたくなるようにおやつで誘導したり、少し休憩するなどして、歩くことを無理強いするのは避けましょう。
ワンちゃんのストレス解消法とは?
ワンちゃんのストレスの原因やストレスサイン、そして無意識に与えてしまっている悪影響を理解したところで、飼い主さんにできるワンちゃんのストレス解消法について見ていきましょう。
飼育環境を整える
飼育環境がストレスの原因であれば、その環境を改善しなければなりません。
暑すぎや寒すぎを防ぐためには温度管理を、照明の明るさが負担になっている場所は暗い逃げ場所を確保しましょう。ワンちゃんが嫌がるようなら、不要な芳香剤や音楽は控えるなど、ワンちゃんの反応を見ながら改善を重ねていきましょう。
適度な運動やスキンシップ
適度な運動はストレス発散になるので、できるだけ毎日散歩に連れていくようにしましょう。そして何より飼い主さんとのスキンシップは、互いの絆を深めることにも効果的です。
留守番や引越し、家族構成の変化などがストレスの原因の場合には簡単に改善してあげられることが難しいですが、そのような時にこそ飼い主さんとのスキンシップは、ワンちゃんにとって安心感につながり、ストレスの解消を期待できます。
ご飯の量や質の見直し
飼い主さんがしっかりとご飯を与えていると思っていても、十分な量や質が満たされていないことがあります。
もちろん食べさせすぎると肥満につながるリスクもあるため、ただ欲しがる分を与えるのではなく、食べさせ方を工夫するなど、適量をしっかり満足できる形で与えられるように日々の試行錯誤が必要です。
ストレス解消グッズを与える
ワンちゃんのストレス解消方法には、ガムやおもちゃなどのストレス解消グッズの利用も便利です。こうしたグッズはお留守番中の不安な気持ちを紛らわせたり、おもちゃにイライラをぶつけたり、ワンちゃんがストレスを溜め込まないために効果的です。
まとめ
ワンちゃんと飼い主さんが快適に暮らしていくためには、飼い主さんがワンちゃんをしっかりと観察してあげることが重要なポイントです。日頃からワンちゃんの様子を気にかけ、ストレスサインを送っているときには、原因を探って解消してあげましょう。