オスのワンちゃんの去勢手術同様、メスのワンちゃんを迎えた際に悩むのが、避妊手術を受けさせるかどうかだと思います。そこで今回は、避妊手術の必要性やメリット・デメリット、費用や術後のケア方法や注意点などを解説します。
避妊手術はすべきなのか?
子犬を迎え予防接種がひと通り終わると次にメスのワンちゃんだと「避妊手術をした方がいいのかな?」と考え始める方が多いでしょう。オスのワンちゃんと同様、避妊手術をしなければいけないということはありませんが、どちらかと言うとオスのワンちゃんに比べ手術をする割合が多いようです。その理由は後述の乳腺腫瘍をはじめ、メスのワンちゃん特有の病気のリスクが大幅に軽減できることが大きいようです。
まずはメリット・デメリットをしっかり比較した上で判断しましょう。
オスのワンちゃんを迎えた際に悩むのが、去勢手術を受けさせるかどうかだと思います。そこで今回は、去勢手術の必要性やメリット・デメリット、費用や術後のケア方法や注意点などを解説します。
去勢手術はすべきなのか?
オスのワンちゃんの[…]
避妊のメリット
避妊手術を受けることで病気のリスクやストレスを軽減させる期待が持てる等のメリットがあります。ここでは4つのメリットをご紹介します。
発情に伴うストレスや攻撃性の軽減
メスのワンちゃんの発情期は年に1~2回の頻度でやってきて、10日間ほど続きます。発情期間中のメスのワンちゃんは「落ち着かない」「食欲がない」「甘えん坊になる」「色々な所におしっこをしてしまう」など普段と違った様子を見せます。また発情期はホルモンバランスが崩れるので、ワンちゃんも情緒不安定になったり、攻撃的になってしまうことがあります。避妊手術を行うことで発情期がなくなるため、マーキングをしなくなったり、性格が穏やかになったり、発情出血等、性的なストレスが軽減されます。他にもワンちゃんに多い偽妊娠(発情後に妊娠していないにもかかわらず乳腺が腫れたり巣作り行動をしてしまうこと)を避けることができたり、発情に伴う体調変化やストレスから解放されます。
【メスのワンちゃんの主な発情兆候とは】
・いろんなところでおしっこする
・落ち着かない
・食欲がない
・オスの近くへ行きたがる
・マウンティングする
・甘えん坊になる
・おっぱいや陰部がふっくらする
・発情出血(生理)
・性欲が強くなる
病気の予防
避妊手術を受けることによって、以下のような生殖器や性ホルモンに関係する病気を予防できるといわれています。
・乳腺腫瘍(乳がん)
・子宮内膜炎
・子宮蓄膿症
・卵巣腫瘍
・卵胞嚢腫
もちろん手術をしても、上記の病気になる可能性はありますが、その頻度が減ります。
上記のうち代表的な病気についてご紹介します。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は子宮の中に膿がたまることにより起こる病気です。進行が早く、子宮破裂を起こすと腹膜炎や敗血症を起こす危険があり、早急に手術をしないと最悪死んでしまうこともあります。避妊手術していない7歳以上メスの25%が罹ると言われています。
乳腺腫瘍
早期の避妊手術をすることにより乳腺の発達を妨げ、乳腺腫瘍のリスクを抑えることができると言われています。手術が早期であればあるほど発生率は低下し、2歳半を超えると予防効果はなくなると言われています。
望まない妊娠を防ぐ
発情中のメスのワンちゃんは特有のフェロモンを発し、それにオスのワンちゃんが反応して交尾をします。このため、発情中にお散歩する場合は、他のワンちゃんに気を付けて行わなければなりません。興奮したオスのワンちゃんにより望まない妊娠が成立してしまうことがあります。
生理トラブルに悩まない
メスのワンちゃんは、早ければ生後6か月を過ぎた頃から、発情期の前に8日間ほど出血が見られるようになります。出血量には個体差がありますが、人間のように大量に出血をすることはなく、少量垂れる程度の出血です。ただ、清潔な環境を維持してあげるために、血が垂れたら都度ふき取ってあげる必要があります。ちなみに、生理用のおむつはありますが、おむつを履かせたままオシッコやウンチをすると皮膚が蒸れてしまうので、一般的にはおむつを一度脱がせてからトイレをさせます。そのため、飼い主さんが長時間家を空けることが難しくなります。このような生理の対策についても、避妊手術をすればその心配や手間がなくなります。
避妊のデメリット
避妊手術はメリットばかりではありません。ここでは避妊手術を受けさせることで考えなければならないリスクやデメリットを解説します。
繁殖できなくなる
避妊手術では生殖器官を取り除いてしまうので、オスの去勢手術同様その後繁殖させることはできなくなります。将来愛犬の子犬を産ませたいかどうかなど、慎重に検討する必要があります。
手術には全身麻酔が必要
避妊手術は全身麻酔をかけて行いますが、まれに血圧低下などの体調不良を起こす場合があります。ただし、体調不良を起こす割合は0.1%~0.2%と少ないうえ、不調が起こる可能性を見極めるために、手術前に麻酔をかけられる状態なのか検査をするので過剰に心配しなくても大丈夫です。ただし短頭種は、麻酔をかけるために装着していた気管チューブをはずした後に、呼吸困難等を引き起こす可能性があるので、手術を行えるかどうかはかかりつけの獣医の先生と相談して決めましょう。
手術前の検査は一般的に以下の通りです。
・獣医師による全身チェック
・検温
・血液検査
・レントゲンやエコー検査
避妊手術自体の時間はおおよそ15分程度ですが、麻酔を入れてから完全に覚めるまでは、1時間位かかることが多いようです。
太りやすくなる
避妊手術により卵巣を取り除くと女性ホルモンの分泌が減り、ホルモンバランスが変わり基礎代謝が下がります。
また、発情に伴うストレスが減少することで食欲が増えるため、さらに肥満のリスクが増します。手術後はフードの量を減らすか、避妊手術後用のフードにするといいでしょう。
手術後に合併症が起きる可能性がある
頻度は非常に低いですが、手術後に以下のような合併症が起きる可能性があります。
・尿をもらすようになってしまう
・傷口を縫った糸に炎症反応を起こしてしまう
・手術部分に毛が生えてこない
・腹壁ヘルニア
などが生じることもあります。
避妊手術すべきタイミングとは?
メスのワンちゃんの初回発情は6カ月から1歳の間に起こり、その後6か月周期で起こります。先述の乳腺腫瘍は初回発情前に避妊手術を行った場合、避妊手術をしていないワンちゃんに比べ発生率を0.5%まで落すことができます。その為、病気の予防という点においては、初回発情前に手術をするのが良いですね。
なお、初回発情と2回目の発情の間に避妊手術を行った場合の発生率は25%と発情が起こるたびにその確率は上昇し、2歳半を過ぎると乳腺腫瘍に関しては病気予防の効果が得られなくなります。このため乳腺腫瘍を予防するには遅くとも6カ月から1歳を目安に避妊手術を行うことが望ましいです。
また、発情中の子宮は腫れて充血しているので手術中の出血量が多くなり、急激なホルモンバランスの変化により体調不良を起こす恐れがあるため、発情中の手術は出来ません。発情が終わってからもしばらくは子宮が腫れた状態が続くため、避妊手術は発情が終わってから最低でも1ヶ月は空けるようにしましょう。
避妊手術の流れ
一般的な手術の流れをご紹介します。
予約
かかりつけの獣医さんと相談し、手術前検査・手術の日程を決めます。
手術前検査
手術当日もしくはその前に、全身麻酔が問題ない体かどうか、体調が悪くないかをチェックします。ワンちゃんの状態や獣医さんによって変わりますが、問診・触診・聴診などの身体検査のほか、レントゲン検査・エコー検査・超音波検査・血液検査・尿検査などを行います。
手術当日
全身麻酔をかける前に何か食べてしまうと、食べ物や唾液、胃液などが気管に入ってしまう可能性があるので、基本的に手術前は絶食となります。獣医さんによってはお水も飲んではいけない場合もあるので、事前によく聞いておきましょう。
手術が終わったら
手術後は傷口の消毒をし、麻酔から覚めるのを待ちます。状態に問題がなければ、通常は半日~1日程度でお家に帰れます。ただ、術後に急に何かあった時にすぐ対処できるよう、帰宅後はできるだけ一緒にいてあげましょう。
抜糸
一般的に手術後1週間程度で抜糸できます。
手術は痛むの?
先述の通りワンちゃんの去勢手術は、全身麻酔で眠った状態で行いますし、また最近では鎮痛剤も使用することも多いので安心です。
ただ、そもそもワンちゃんは痛覚に関して強いと思われます。
人間であれば痛くて動けないような傷を負っていても、平気でご飯食べたりする子もいるくらいです。
避妊手術の手術費用は?
避妊手術の費用は、獣医さんによって異なります。
目安としては手術前検査と手術と1泊入院で3〜7万円程度です。
また、ワンちゃんに乳歯が残っている場合は、去勢手術の時に一緒に抜歯手術をすることが多いです。
こちらは本数にもよりますが、追加で1~3万円程度かかることが多いです。
避妊手術の注意点
ワンちゃんが去勢手術を終えて帰宅した後は、以下の点に注意しましょう。
体調や様子をこまめにチェックする
通常の避妊手術ではワンちゃんの状態が安定し次第、その日のうちに帰宅できる場合がほとんどです。ただし、手術後2~3日は本調子でないワンちゃんが多いので、帰宅後はできるだけ一緒にいてあげて、愛犬の体調や様子をこまめにチェックしてあげましょう。
また、手術による精神的な影響や、動物病院に置いていかれたショックで食欲が低下するワンちゃんもいます。積極的にスキンシップをとったり、おやつをあげたりして、ワンちゃんがリラックスして元に戻れるようにしてあげましょう。もし元気がない状態が何日も続く場合や、オシッコが出ないなどの不調が見られる場合は、すぐに獣医さんに相談しましょう。
エリザベスカラーなどで傷口を保護する
手術後の傷口を舐めさせてしまうと、そこから菌が入って化膿したり炎症を引き起こしたりする危険性があります。エリザベスカラーなど傷口を保護するようにしましょう。
手術後すぐは運動・シャンプーを控える
手術後すぐにワンちゃんが体を動かしてしまうと、傷口が開いたりして痛みが出てしまうので、抜糸がすむまでは過度な運動は避けましょう。通常の散歩は手術後2~3日経ち、獣医さんの許可が出れば行くことができます。
ただし、走らせると腹圧がかかって傷口が開いてしまう恐れあるので、ドッグランなどワンちゃんが興奮したり走りってしまったりする場所には連れて行かないようにしましょう。
また、傷口は極力ぬらさない方が良いため、抜糸が終わって傷口の赤みがひくまではシャンプーはしないようにしましょう。
肥満にならないよう食事を管理
避妊手術をすると食欲が増すだけでなく、エネルギー消費量が変化することもあります。以前と同じ食事量・同じ餌を与えると肥満になるおそれもあるので、獣医さんと相談して、食事内容の見直しなどを検討することが必要な場合が多いです。
まとめ
避妊手術を受けさせるかどうかの判断はとても難しいですよね。愛犬の体質や性格によっても選択は異なると思いますが、ワンちゃんや飼い主さんにとってのメリット・デメリットもあるので、その両方を比較した上で避妊手術を検討してみましょう。